拠点その1:沖縄の古い文化と風習を実体験~うるま市平安座島~

うるま市平安座,多拠点生活,沖縄

うるま市の平安座島

どんなに沖縄が好きで移住しても、なかなか沖縄の生活の中に伝わる風習や文化にどっぷり触れられる機会は無いのではないでしょうか。しかも、沖縄の独自の文化や風習も現代社会に合わせて簡素化され、昔ながらのものを体験することが少なくなってきています。

そんな中、平安座島での生活は、「今では見られなくなった沖縄の行事を体験できる」興味深い生活なのです。

もともと主人の実家である平安座島に私が住み始めたのは義母との同居でした。長男嫁でもあり、むーとぅやー(本家)をみている家でもあるので、義母につれられ意味もわからず行事を手伝い、島の人と話をする日々。「将来は全てのことを義母から引き継いで自分がやらなければいけないのだろうな」と思っていましたが、それは嫌なことではなく、むしろ、本土出身なのにこんなに沖縄らしい沖縄の生活を体験し、知ることが興味深くて楽しかったのです。

島での体験は、たぶん沖縄の人でも体験することのない「ザ・沖縄」な生活です。しかも、島という場所は独自の言葉、週間、行事、料理などが存在するので「なぜ、こんなことをするようになったのか」という歴史的な背景を想像するのもまた、好奇心をくすぐるのです。

どっぷりな島の文化とはどんなものなのか…あげればキリがないので、今までで印象に残っている話をふたつ。

<家の前を走り抜ける火の玉>

平安座島の生活が始まってしばらくしたころ。とある夜、視界の端に窓の外を火の玉が走り抜けていった…ような気がしたのです。
家は道路に面しているので、「ん?車の灯りか何かだったのかなー?」と、その時はそれほど深く気にしませんでした。

でも、多分それからひと月もたたない頃に、また家の外を火の玉が通り抜けていったのです。
「今度は間違いじゃない!絶対見た!」しかも幻だとも思えません。
義母に恐る恐る「今、家の前をすごい速さで火の玉が通って行ったみたいだけど…」と聞いてみました。おかしくなったと思われたらどうしよう…と不安だったのです。

すると義母はあっさりと「ああ、誰か亡くなったんだね」と。

いやいやいや、どういうこと!?人魂なの!?私は見てはいけないものを見た!?
答えを聞いてさらに愕然。ちょっといろんな意味で自分を疑いました。

義母には詳しく聞けず、主人にその話をすると
「平安座では、葬式の夜に松明に火をつけて墓まで運ぶっていう習慣があるんだよ」とのこと。

それでもその場では、なぜそんなことをするの?という疑問は解決しなかったのですが、ひとまず自分が幻覚を見たわけではないということに安心しました。

実は島の葬儀については、もっと独特のものがあったのですが、それは義母が亡くなった時に体験することとなりました。

<洗骨>

あの世の話ばかりになりますが、あの世に対する考え方こそ、沖縄は独特だなと思います。

数年前に映画にもなった『洗骨』という風習は、今では沖縄でも限られた場所でしか行われていません。
主に離島にその習慣が残っているようです。

戦前は埋葬(土に遺体を埋める)だった沖縄では、遺体が白骨化したあとに、川の水で骨を洗い、骨壺に納めてからお墓に入れていたそうです。戦後は、伝染病を蔓延させないなど衛生面の問題で火葬となったので 今では実際に骨を洗うことは出来ないのですが、儀式のみ平安座島にも残っています。

『洗骨』は本当に不思議な体験でした。
平安座では、夫婦ともに亡くなっている場合、7年忌を過ぎる時に新しく夫婦用の骨壺に二人の骨を納めなおします。そのときに一緒に洗骨の儀式をするのです。

火葬のあとにひとりずつ納められていた骨壺から骨を出し、そこに神人がほんの少量の水をかけて儀式を行います。新たに準備された夫婦用の骨壺に、左右にそれぞれ分けて骨を入れ、最後に大きく残っている頭の骨の部分を入れます。そして、再びお墓に戻すのです。

火葬された骨は灰になっているので、風が吹けばそのあたりに舞ってしまいます。骨の入れ替えをするのは長男嫁の役目。自分の手で、義祖父母、義父母の骨を丁寧に入れなおす間に白い灰がそっと自分に降り積もります。一見埃のようなので、手でパンパンと払い落としそうになったのですが、「これも人の体の一部なんだな」と思ったら雑に扱うことは出来ませんでした。
嫌な気分は全くせず、そのまま白い灰をかぶっていましたが、まるで亡くなった人たちにあたたかく包まれているような、不思議な不思議な感覚でした。


どうでしょう?こういう体験は沖縄で生まれ育った人でさえ、今ではレアなことのようです。

少し前に会社勤めしていたころ、若い後輩女子が私に行事のことについて相談してきました。
「お母さんに聞いたら教えてくれるんじゃない?」と言ったら、「うちの母はこんなこと知らないから」と私に聞いたのだそうです。
「私はうちなんちゅ(沖縄の人)じゃないよー?聞く相手間違ってない?(笑)」
「だって、沖縄の人より沖縄の人ですよー」と返されました。

なるほど島での生活は貴重な体験の連続なんだな、とその時に実感したのです。