島の旧正月

平安座,沖縄

平安座島の新年は旧正月からスタートです。

ほとんどの行事が旧暦で行われる地域なので、お正月も旧正月しか行いません。玄関の飾りも、お年玉も、お歳暮配りもご馳走も、すべて旧正月に行います。

沖縄も多くの地域が新暦の正月に移行しているので、なかなか昔ながらの旧正月の風景を見ることは出来なくなっていると思います。島の人間にとっては当たり前の旧正月ですが、もしかしたら今後、その風景もなくなっていくのだろうかと思い、現時点での様子を伝えておきたくなりました。

<島としてやること>

島の神様を祀る「神屋」。やはり新年はそこから拝んでいくのです。自治会長はじめ職員や、神人、また希望していく人たちみんなで神屋にあつまり、今年一年の島の繁栄と健康をお願いします。本来はノロが拝んでいたのでしょうが、現在は不在。神人が代理であることを告げて神様にお願いしています。

そのあとは、島の放送で区長が新年の挨拶。また昼頃には「かぎやで風」から始まり、新年の祝いの曲が風に乗って島のスピーカーから流れてきます。市町村の防災無線とは別に、ちゃんと島の連絡網となる放送設備があるんですよ。

また、今日は各家庭にお歳暮を持って人がたくさんやってくるので、ただでさえ道幅の狭い島の道をバスが通ることが難しくなります。そのため、バス路線も海岸側に変更したりするんですよ。そんなお知らせもスピーカーから流れてきます。

<各家庭の正月風景>

沖縄の正月料理は?

お正月だけ作る、いわば本土のお節料理の習慣は沖縄には無いのです。お雑煮を食べる習慣もありません。お正月でも、他の時期の行事料理でも基本は「重箱」料理です。重箱には7品か9品の奇数の食材が入りますが、準備するのもなかなか大変なので、近年はスーパーやお弁当屋さんなどに注文する人が多く、自分で作ったことの無い人も増えているのが現状です。親戚が集まるので、重箱と一緒にオードブルを注文される方も多いですね。

<正月飾り>

地域によって違いがありますが、平安座では玄関のしめ縄、門のところに松と竹。火ぬ神や仏壇、床の間にはアカカビ(赤い紙)と、小皿に入れたミカン、結び昆布、炭、お米を飾ります。

<お年玉>

平安座では子供たちがお年玉をもらえるのも旧正月。新正月にくれる家はありません。元日の朝に訪ねてくるのは「男子」が縁起が良いとされているので、年末になると親戚の男の子たちに「朝いちばんに来たらお年玉あげるよー」と声をかけておくんですよ。

<お歳暮>

本土では年が明けてから持って行くのは「お年賀」となりますが、沖縄は年末でも年始でもお歳暮です。家の近所だけでなく、県内車で行けるところには郵送ではなく持参するのがほとんどです。そして、お歳暮を持って行く家、行かない家の基準。それは「仏壇」だと言われています。仏壇の無い家にお歳暮を持っていくことは本来はありません。自分の血のつながり、ルーツとなる家の仏壇に対してお歳暮を持っていくのです。お仕事上のご挨拶としてのお歳暮は、本土の習慣ですよね。

<初日の出>

これも多分本土の習慣。平安座では初日の出のみ新正月に行っています。これはもともとあったものではありませんが、子供たちに新暦の正月というのもあるのだということを知ってもらうために「アガイティーダの日」として初日の出を拝む行事だけ作ったそうです。一度だけ参加したことがありますが、飲み物とパンももらえましたよ。でも寒くて寒くて!

<年賀状>

年賀状を出す習慣も本土のもので、メールやSNSが普及する以前でも個人で大量に年賀状を書く人はほとんどいませんでした。今はもっと少ないでしょうね。

<家庭では元日に何をするの?>

仏壇のある家では、お歳暮を持って人が来るのでお茶を出したりお菓子を出したり。旧正月は祝日ではないので仕事をしている人などは終業後に急いで回ったりします。1軒ずつあまり時間が取れないことが多い昨今、お茶も缶で準備して、「持っていって!」と渡すことが多くなりました。昼間は来客の対応をして過ぎていき、夜は近い親族だけでごちそうを食べます。その時には、今年のお祝いや法事の予定など確認したりするのですが、これが結構大切。お祝いは、十三祝いや米寿など年齢にまつわるものがほとんど。特に米寿(88歳)ややガージバール(99歳)のお祝いがある家は、正月からその打ち合わせに余念がありません。誰が何を担当するか、誰を招待するか、お返しの品から料理まで手配関係・・・。一族みんなで取り組みます。

お祝い事だけでなく、今年の法事予定も要チェック。平安座では命日も旧暦なので、例えば七回忌なども旧暦で日を確認して決めるのです。でも、他の地域の方々は、それを知らない人も多いですし、そもそも旧暦の命日を今年の新暦の日に置き換えるといつなの?という計算が面倒。なので、法事を行う家があらかじめ、「今年は〇月〇日にだれだれの法事やるから」ということを親戚に伝えないといけないのです。

元日はこんな感じで過ぎていきます。

ウビナディー

旧暦1月3日は、ウビナディーと呼ばれる拝みの日です。

それぞれの門中まとまって、いくつかの湧き水を決まった順番に拝んでいくのですが、どの門中も必ず行くのが「与佐次(ユサンディ)ガー」。平安座のウブガー(子どもが生まれた時に産湯に使う水を汲む湧き水)なので、順番は多少違っても、必ずここは拝むのです。

回っていく湧き水の場所は石油基地の中にもありますので、ちゃんと許可証を取って(車のマフラーに火花防止の網もかぶせる)入ります。

どこも、米とビンシー(携帯拝みセット)を持って回っていき、ウブガーの水で米を洗って、それを戻ってから門中の人に配ります。

洗った米を受け取って家に帰ると、ひとりひとり東の方角を向いて頭に米を乗せて健康を祈願します。

他の地域ではまだ聞いたことがないのすが、これって平安座だけなんでしょうか?

あの世の正月もくる

旧暦の元日は、今生きている人のためのお正月。そして、旧暦1月16日には、グソー(あの世)の正月が来ます。

「ジュウルクニチ」と呼ばれていますが、地域によってはこちらの方が大きく行事を行うところもあって、お歳暮も配ったりしているそうです。

平安座の場合は、家の仏壇には少しおかずを備える程度。ですが、亡くなった人のいる家では、初めて迎えるあの世の正月ということで、大きく来客を迎えます。

そんなことから、「今年のジュウルクニチのはどこにいかないといけないのか」を確認して全ての家を該当するすべての家を周っていくことになるのです。

沖縄のお正月、何度もあるしそれぞれに意味が違うし…。でも生活するなら知っておきたい風習なんですよ。